『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』に登場する式波・アスカ・ラングレーと真希波・マリ・イラストリアスには親子、もしくは異母姉妹など、血縁関係があるのでは? という考察があるのをご存知ですか?
きっとそうなのだろうと多くの方がそう感じている理由は、この説の根拠の多さとわかりやすさでしょうか。
しかしその根拠を見てみると実はかなり弱かったりします。
例えばこの説を裏付ける根拠として
- アスカはマリのことを「コネメガネ」と呼ぶが、この「コネ」はドイツ語で「母」という意味
- マリが2号機に搭乗する際にコアの書き換えを行なっていない
といったものなどが挙げられますが、今回私は「アンチ・アスカマリ親子説」派としてこの2つの根拠をバッサリ両断したいと思います。
①「コネメガネ」、この「コネ」はドイツ語で「母」という意味?
単刀直入に言うとこれは嘘です。ドイツ語で「母親」を表す単語は「Mutter」、発音は「ムッター」。どう工夫しても「コネ」にはならないと思います。
②マリはコアの書き換えなしでエヴァに自由に乗れる?
この説を裏付ける根拠のうち、最も重要なものの1つではないでしょうか? しかしこれも嘘です。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』にて、マリが2号機に搭乗する際にその後ろで何やら複数の英語のアナウンスがあります。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』より
一体何をアナウンスしているのかというと、これは全記録全集に全翻訳版が載っております。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
全記録全集より
以下、抜粋。
「エヴァ2号機の封印を解除。現在第2サイロを開放中」
(Eva Unit Two's containment measures have been unlocked. We are currently opening up Silo Two.)
「最終安全装置を解除。拘束具の状況は全てフリー」
(Final safety systems have been disabled. Removal of all restraining gear is now complete.)「エントリープラグ移動中。挿入固定位置まで、あと30秒」
(Entry plug currently moving into position. Thirty seconds to insertion lock position.)
「コアユニットの自動換装作業を開始」
(Core unit automatic reconfiguration sequence has begun.)
「アクセスキーを書き換え。新規登録パイロットは、パスコード05真希波・マリ・イラストリアス」
(Rewriting access key. The new designated pilot will be registered as Mari Makinami-Illustrious, pass code zero five.)
「起動プログラム開始まで、あと2分40秒」
(Two minutes forty seconds until activation program start.)
これを見てわかるように、マリは強引にアスカのコアのままエヴァ2号機に搭乗したわけではなかったのです。
余談ですが、そもそも『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』ではTV放映版と違い、「コアの書き換え」というものはなく、「コアユニットの換装」によってパイロットに合わせたエヴァにします。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』より
「書き換え」と「換装」、これはまるで意味が違います。テレビ放映版ではエヴァの1つの臓器のようだった〝コア〟は新劇場版においては取り外し・交換可能な〝コアユニット〟になったわけです。その利便性は『:破』でリツコが以下のように発言しています。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』より
「エヴァは実戦兵器よ。全てにバックアップを用意しているわ。操縦者も含めてね。」
つまり〝アスカしか乗れない2号機〟ということでは決してないのです。そういった意味でも、同じく『:破』の冒頭でエヴァ仮設5号機を失っても、バックアップとして残しておいたコアユニットで2号機に、『:Q』では8号機に、といった具合にパイロットは他のエヴァも操縦できるのだと思います。
これにより、エヴァは〝特定の誰かでないと操縦できない兵器〟ではなく、もっと汎用性の高い兵器として現実味のある設定になったのではないかなと、個人的には考えています。
バッサリ冒頭の説を否定してきましたが、真相はやはり、エヴァの物語が進まないことには断言できません。あくまでこの2つの根拠は弱いのでは、という説明でした。
考察:2017年
このページに記述されたことはあくまで“考察”です。どんなに正しそうな説でも、それが真である確証はありません。「この考察・説が正しい」と断言はせずに、「こんな考え方もある」程度に考えておきましょう。
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