【考察ノート:37(前編)】人類補完計画への3つのシナリオ
HERZのエヴァ考察ノートへようこそ!
今回は、新劇場版エヴァの裏テーマとなっている「人類補完計画」について、劇中のセリフを中心に考察し、前後編でまとめていきたいと思います。
この記事はその前編になります!
こちらはシンエヴァ公開前の状態で保存しています。3つのシナリオ
まず、新劇場版では、ネルフとゼーレにはそれぞれの思惑があり、異なるシナリオを進めようとしていると思われます。そのシナリオは、大きく分けて3つ存在し、①ゼーレ独自のシナリオ②ネルフ究極の目的のためのシナリオ③両者が協力して目指しているシナリオ(表向きには協力しているふりをしている)に分かれていると考えています。さらに、:Q以降では空白の14年のせいで、両者のシナリオが大幅に変更されたのではないかと考えており、この複雑な関係が、新劇場版の人類補完計画を難しくしているのだと思います。なのでまず前編では、:序:破に絞って考えていきます。と言っても、:序の時点ではまだ②③のシナリオは大きく動き出しません。:序では両組織のセリフで、ゼーレ「使徒殲滅はリリスとの契約のごく一部に過ぎん」ゲンドウ「いかなる手段を用いても、我々はあと8体の使徒を倒さねばならん」というセリフがあるので、まず使徒殲滅は①〜③の全てに必要な条件だということが分かります。そして、:破のあらゆる違和感から、お互いのシナリオの違いに気づき始めます。①ゼーレ独自のシナリオ
ベタニアベースでの実験
まず、:破の冒頭はベタニアベースでの第3の使徒戦から始まりますが、この場所の正式名称は秘密結社ゼーレ直轄第3の使徒厳重保管用基地ベタニアベース
です。さらに、:序ではゼーレ「NERVとエヴァの適切な運用は君の責務だ。くれぐれも失望させぬように頼むよ」と言っていたにも関わらず、早速ゼーレ直轄でエヴァを運用していますね。つまり、これはゼーレ独自のシナリオになります。そして、表向きには厳重保管用とされているベタニアベースですが、実際は保管ではなく、使徒を使った実験をしていたようです。↑は第3の使徒の首の設定資料ですが、第3の使徒を制御し、エントリープラグでヒトとシンクロさせることを実験してたのではないかと考えています。しかし、加持のセリフで「人類の力だけで使徒を止める事は出来ない。それが永久凍土から発掘された第3の使徒を細かく切り刻んで、改めて得た結論です」と語られているので、結局実験には失敗したようです。Mark.6の建造
次に、冬月とゲンドウが月面のタブハベースを視察しに来たシーンでは冬月「5号機以降の計画などなかったはずだぞ?」
ゲンドウ「おそらく、開示されていない死海文書の外典がある。ゼーレは、それに基づいたシナリオを進めるつもりだ」と語られており、ここで初めて、ゼーレは死海文書外典に基づいた独自のシナリオを進めるつもりだということが判明し、それにはMark.6が使われるということが分かります。さらに、「だが、ゼーレとて気づいているのだろう。ネルフ究極の目的に」というゲンドウのセリフがあるので、ネルフにも独自の目的があることが明かされます。ここで改めて3つのシナリオに分岐していると確定しました。つまり、3つのシナリオを簡単に説明すると①死海文書外典に基づいたシナリオ②ネルフ究極の目的③死海文書通りのシナリオ(表向きには協力)ということになります。エヴァ4号機の消滅
次に、エヴァ4号機の消滅についてですが、冬月「エヴァ4号機。次世代型開発データ収得が目的の実験機だ。何が起こってもおかしくはない。しかし…」
加持「本当に事故なのか…」というシーンがあるので、4号機の消滅はまず事故じゃないと考えていいでしょう。そして、没シーンではゼーレ「エヴァ4号機と多くの同胞を消失したが、代わりに得たものも大きい」
「犠牲なくして、人類の浄化は望めぬ。エヴァという名のヒト柱はやむを得まい」というセリフがあります。よって、4号機消失の黒幕はおそらくゼーレで間違いないでしょう。では、代わりに得たものとは何なのでしょうか?先ほどの冬月の発言で、エヴァ4号機は次世代型開発データ収得が目的の実験機と明かされたので、代わりに得たものはおそらく次世代型開発データでしょうこの次世代型開発データについては、リツコのセリフで「稼動時間問題を解決する、新型内蔵式のテストベットだった…らしいわ」と語られています。さらに、この部分のオミットシーンでは、S2器官搭載実験とも書かれています。S2機関は、今のところ新劇場版には未登場ですが、TV版に登場する使徒のエネルギー源のようなもので、エヴァに搭載すれば活動限界が無くなるというものなので、新劇場版の説明にある“稼働時間問題を解決する”という意味にも通じます。よって、ここで行われていたのは活動限界のないエヴァの起動実験。さらには使徒とエヴァの擬似的な融合だったとも言えるかもしれません。ちなみに、この4号機の実験データを元に、:Qのネーメジスシリーズ(Mark.4)が作られたと考えています。
Mark.4はBlood type≌Blueですから、やはりエヴァと使徒の擬似的な融合は成功していたと考えられます。第9の使徒の真実
次に、3号機を侵食した第9の使徒について。初期脚本では第9の使徒殲滅後にゼーレのセリフがあり、「エヴァ3号機は予定通り、第9使徒の依代としての役目を終えた」
「予測通り、使徒とエヴァの融合は可能であったな」
「そして、エヴァを触媒とし、我ら人類との融合の可能性も見いだせた」と書かれているので、第9の使徒が3号機を侵食したのは、ゼーレの策略だったと考えられます。そして、ゼーレの目的は使徒とエヴァの融合、さらには使徒とヒトの融合を目指している事が分かります。過去のゼーレの動きを思い返すと、・ベタニアベースでは、使徒へのヒトのエントリーを実験するも、失敗。・4号機の実験では、使徒とエヴァの融合を実験し、実験データのみを入手。そして、最後に3号機と第9の使徒を用いて、エヴァを介して使徒とヒトを融合しようと試みたのでしょう。ちなみに、初期脚本の続きではキール「希望は実現しつつある。失った人柱の犠牲にも報いねばならん」
「過酷すぎるな」
キール「そのための子供たちだ。人にはまっとうすべきそれぞれの役がある」と語られており、これは前回の考察↓にリンクします。つまり、運命を仕組まれた子供達は、エヴァにシンクロできるという能力を持っているため、使徒とヒトの融合を果たすための役があるということでしょう。カヲルの存在
:序で登場したカヲルのシーンではカヲル「分かっているよ。あちらの少年が目覚め、概括の段階に入ったんだろう?」
ゼーレ「そうだ。死海文書外典は掟の書へと行を移した。契約の時は近い」というセリフがありますが、外典はゲンドウには明かされていないので、カヲルもゼーレ独自のシナリオでしょう。実際、ゲンドウ達は月面ではカヲルを知らなかったようなリアクションをしていますし、:Qではゼーレの少年と呼ばれています。また、カヲルは自身を第1使徒と自称していたので、使徒とヒトの融合という1つの形だったのかもしれません。ゼーレの目指す人類補完計画
初期脚本のゼーレのセリフではキール「我らは、個体ではいきていけない。だが、個体ゆえの苦しみから開放されることもない。その業と原罪を超えるための、人類補完計画なのだ」と言っているので、新劇場版でもゼーレの目的は変わらず、ヒトが完全な個体となることを目指しているようです。さらに、ここまでの考察からも分かるように、ゼーレは使徒とヒトの融合を目指しており、知恵の実と生命の実を両方得た完全な個体となることを目的としているようです。そして、死海文書外典に基づいた人類補完計画には、真のエヴァンゲリオンであるMark.6が必要なのでしょう。②ネルフ独自のシナリオ
初号機の重要性
ネルフのシナリオが分かる点は:序の段階でも少しだけあります。第6の使徒と初号機が会敵するシーンでミサト「作戦要綱を破棄、パイロット保護を優先。プラグを緊急射出して!」
ゲンドウ「ダメだ」
リツコ「いまパイロットを失えば、エヴァのA.T.フィールドは完全に消失してしまう。最も憂慮すべき事態よ」というセリフがあります。ここから、重要度はシンジ<初号機ということが分かります。(初号機のコアにはユイがいるので、当たり前と言えば当たり前ですが)また、冬月「初号機パイロットの処置はどうするつもりだ?」
ゲンドウ「ダミープラグは試験運用前の段階だ。実用化に至るまでは、いまのパイロットに役立ってもらう」というシーンがあるので、シンジはダミープラグまでの繋ぎに過ぎず、最終的には実用化したダミープラグで、計画を実行しようとしていたのでしょう。余談:ダミープラグについて
ダミープラグについては、ネルフ独自のものだと考えています。さらに、ダミーにはゲンドウの魂のダミーが入っている可能性があると考えています。そう考える理由として、「なぜだ…なぜ私を拒絶する、ユイ!」というゲンドウのセリフがあるのですが、“私”というのが引っかかりませんか?これはユイがダミーを拒絶しているだけであって、本来ゲンドウの拒絶とはならないはずです。なので、ダミーの中にゲンドウが入っているのではないかと考えました。先ほど、シンジはダミープラグの実用化までの繋ぎに過ぎないという考察をしましたが、ダミーに自分の魂のコピーが入っていれば、それはシンジよりも信用できるパイロットになること間違い無しじゃないですか?また、第9の使徒戦では、ゲンドウの魂のコピーが戦っていると考えると、サイコパス加減にも納得できるような気がしますw正直この余談は考察に大きく関係しませんが、なんとなく頭の片隅に置いて頂ければと思います。ネルフ視点のベタニアベース
ネルフ視点から、ベタニアベースの事故を再度見てみましょう。まず、ベタニアベースから帰還した加持のセリフで「懸案の第3使徒とエヴァ5号機は、予定どおり処理しました。原因はあくまで事故。ベタニアベースでのマルドゥック計画はこれで頓挫します。すべてあなたのシナリオ通りです」と語られました。つまり、加持の諜報によって、ベタニアベースでのゼーレの実験を知ったゲンドウは、原因はあくまで事故として、ゼーレのシナリオを妨害していました。ここで、ベタニアベースでのマルドゥック計画とは、第3の使徒へのヒトのエントリーなどを表していると思われます。ちなみに、“ベタニアベース”でのマルドゥック計画と限定しているようにも解釈できるので、ゲンドウ主導の他基地でのマルドゥック計画がある可能性もあります。サードインパクトのトリガー争い
ゲンドウ達とゼーレの会話でゼーレ「我らの望む真のエヴァンゲリオン。その誕生とリリスの復活をもって契約の時となる。それまでに必要な儀式は執り行わねばならん。人類補完計画のために」というセリフがあります。ここで、“契約の時”とは何なのか。Mark.6が誕生し、リリスが復活することで発生するということなので、おそらく空白の14年で起きた、セントラルドグマでMark.6がリリスに刺さった槍を抜き、復活させた時が契約の時なのでしょう。自然に考えれば、おそらくこれはサードインパクトだと思われます。また、フォースインパクト発動時には、ゲンドウが「契約改定の時が来ました」と発言しているので、“契約の時”とはインパクト時を示しているのだと仮定します。そして、先ほどのゼーレ会議後のゲンドウと冬月の会話で「真のエヴァンゲリオン。その完成までの露払いが、初号機を含む現機体の勤めというわけだ」
「それがあのMark.6なのか?偽りの神ではなく、遂に本物の神を作ろうというわけか」
「ああ。初号機の覚醒を急がねばならん」と語られています。つまり、ゼーレは独自のシナリオでMark.6を使って計画を進めるようだが、ネルフは独自のシナリオである初号機の覚醒を急ぐようです。これは、サードインパクトのトリガー争いとも考えられるでしょう。おそらく、サードインパクトには神と呼ばれるエヴァが必要で、ネルフでは擬似シン化で偽りの神を作るシナリオだったのに対し、ゼーレのシナリオは初めから本物の神を作るというもの。しかし、ネルフ究極の目的は、おそらくユイが関わっているため、どうしても初号機である必要があるのでしょう。実際に、:破で行われたニアサードインパクトは、本物の神の誕生を待たずして、初号機を擬似シン化させ、トリガー権を奪取したということだと考えています。トリガーに関しては↓の記事で考察しています。初号機の覚醒に至るまで
:破で初号機が覚醒したシーンでは冬月「やはり、あの二人で初号機の覚醒は成ったな」
ゲンドウ「ああ。我々の計画に辿り着くまで、あと少しだ」というセリフがありますが、:序の時点から初号機の覚醒を目指していた伏線があります。1つ目は冬月「結局、お前の息子は予定通りの行動を取とったな」
ゲンドウ「ああ。次はもう少しレイに接近させる。計画に変更は無い」という2人の会話です。この時点で、既にレイとシンジでの初号機の覚醒を信じていたのでしょう。息子を1度弱らせ、美少女が弱みにつけ込むことで、感情を増幅させるというサイコパスな父親ですwまた、ゼーレから3号機を押し付けられた時のゲンドウは「試験前の機体は信頼に足りません。零号機修復の追加補正予算を承認頂ければ」と発言し、無理やり零号機とレイを戦闘に参加させようとしているようです。戦力で言えば、明らかに最新鋭機を優先すべきですから、こういうちょっとした違和感からお互いの独自のシナリオに気づき、牽制しあっている状態だと推測されます。ネルフ究極の目的
再度月面のタブハベース視察のシーンに戻りますが、冬月「これが母なる大地とは……痛ましくて見ておれんよ」
冬月「私は人で汚れた、混沌とした世界を望むよ」というセリフがあるので、おそらくネルフ究極の目的は、個体となることではなく、さらにはインパクトも望んでいないのではないかと思われます。そして、ネルフ究極の目的には覚醒した初号機が必要であり、擬似シン化して神となった初号機で人類補完計画を遂行するのでは無いかと考えています。③両者が協力して目指しているシナリオ
大事なのは①と②の独自のシナリオなのですが、念の為、③の表向きに進めているシナリオについても考察します。4号機消失後のゼーレ会議ではゼーレ「先に、エヴァンゲリオン5号機が失われ……」
ゼーレ「今、同4号機も失われた」
ゲンドウ「両機の損失は、計画の遂行に支障をきたしますが」
ゼーレ「修正の範囲内だ。問題はなかろう」という会話が交わされますが、まず基本的にこの会議は表向きなので、③(両者協力のシナリオ)に基づいているはずです。すると、ゲンドウの発言から、エヴァの数が必要であることが分かりますね。しかし、ゼーレは問題ないと言っています。ゼーレ独自のシナリオでは対して問題ないため、ここでズレが生じているのでしょう。そして、ニアサー時の大事なセリフ「数が揃わぬうちに初号機をトリガーとするとは…碇司令、ゼーレが黙っちゃいませんよ」これは、③から逸れてしまうため、②(ネルフ究極の目的)が露骨にバレてしまうという意味で説明ができます。初号機をトリガーとしたのは問題ではなく、数が揃わぬうちにトリガーとしてしまったのがおそらく問題なので、③ではエヴァを必要数(4体程度)準備して、いずれかを擬似シン化させるというものだったのでしょう。まとめ
まず、新劇場版の人類補完計画は3つのシナリオに分かれていることが推測されました。①ゼーレ独自のシナリオ②ネルフ究極の目的のためのシナリオ③両者が協力して目指しているシナリオそして、それぞれが目指すサードインパクトは①数を揃えていずれかを擬似シン化させ、トリガーとする②本物の神Mark.6をトリガーとする③初号機を擬似シン化させ、トリガーとするというものだと考察しました。と、おそらく読み切った達成感があるところだと思いますが、これはまだ前編ですwこの後、空白の14年を経て、:Qではその立場や計画が少し変化していると考えています。↓ぜひ後編もご覧下さい!この記事を面白いと思っていただけたら、ぜひTwitter等でシェアして頂ければ幸いです!良ければ他の記事やTwitterのフォローもお願いします<(_ _*)>ご質問等あれば、TwitterのDMを頂くのが最も早くお答えできる手段となるので、気軽にご質問ください!ご指摘があれば、ご自身の考察と共にコメントお願いします🙇画像引用:©khara/Project Eva.
©カラー/EVA制作委員会一部参考にさせて頂いたサイト、動画
アルマロスの部屋
2015年~2017年にかけて、Q&Aアプリ〝LINE Q〟で活動していたEVA Mark.06が管理するウェブサイト。 2017年のLINE Qサービス終了に伴い、LINE Qに投稿していた内容をNAVERまとめに再投稿、新規投稿もしています。
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2021.03.03 04:59