『新世紀エヴァンゲリオン劇場版
Air/まごころを、君に』より
エヴァ作品におけるロンギヌスの槍とは何か、皆さんはどうお考えでしょうか。
- アンチA.T.フィールドを展開するエヴァ最強の武器
- 人類補完計画で使うアイテム
- デストルドー(←アンチA.T.フィールドの原動力として)を誘発する
など、色々あるかと思います。
今回は様々な資料を元に、幅広い視点でこのエヴァ最大のキーアイテムにしてオーパーツであるロンギヌスの槍について、言及していきます。
その前に、先にロンギヌスの槍の正体について簡潔に答えを記しておきます。
エヴァにおけるロンギヌスの槍とは、
- A.T.フィールドを〝突破〟できる兵器
- 保安装置であり、人類補完計画の祭器
です。
※あくまで今回は「新世紀エヴァンゲリオン」の範囲での話
それでは、それぞれについて詳しく解説しましょう。
①A.T.フィールドの突破
『新世紀エヴァンゲリオン
第弐拾弐話』より
これを解説する前に、まず以下について考えなければなりません。
アンチA.T.フィールドについて
実はエヴァの劇中発言や公的資料において、ロンギヌスの槍のA.T.フィールド突破が
アンチA.T.フィールドの展開によるものだ
と明言・明記されているものはありません(私の知る限りですが)。
さて、上記の内容について考えるために、以下の資料を参照します。
『新世紀エヴァンゲリオン2』
『新世紀エヴァンゲリオン』を理解する上で最重要資料となる、バンダイのシミュレーションゲーム。
このゲームが〝最重要〟とされる所以は、庵野監督が直々に監修された作品である事にあります。故に、原作の世界設定、謎に対する回答、といったゲーム内で開示される情報に原作と同等の信頼をおけるのです。
このゲームでは機密情報というものを入手する事ができます。これも庵野監督ご自身のインタビュー内容からまとめられたもので、その中に、ロンギヌスの槍に関する記述があります。
非公開情報
意思を持った槍であり、自力で移動する能力も持つ一種の生命体である。
そして、残念ながらアンチA.T.フィールドに関する直接的な記述はないものの、A.T.フィールドに関する記述で興味深いものがあります。
最深度情報
A.T.フィールドの拡大、それの極限は、無限製の自我=神であり、その前では、自我を崩壊してL.C.L.に戻る。
これはA.T.フィールドの極限状態がアンチA.T.フィールド、そう読み取れるような記述ですね。
実際、公式小説『エヴァンゲリオンANIMA』では、ロンギヌスの槍が延伸し形成したロンギヌス境界面の正体は、巨大なA.T.フィールドでした。
(文庫版では表現に変更あり)
※ただし、エヴァANIMAは原作と食い違う設定も見られるため、全てを鵜呑みにはできない
『電撃ホビーマガジン』
2009年4月号より
これが投擲した本人=アルマロスによるものだとは考えにくく、そしてロンギヌスの槍それ自身が生命体、つまりA.T.フィールドを展開する事ができると考えれば、それを極限状態まで高め、先端に収束する事ができるのだとしたら…。
それはまさにアンチA.T.フィールドなのではないでしょうか?という気もします。
ただし…一方で以下のような記述もあります。
1996年・1998年発売のレーザーディスク『新世紀エヴァンゲリオン』に掲載の解説文より
人類補完計画及び使徒に関する内務省調査部の報告
従来、槍は対象のA.T.フィールドを中和・消滅させるとする説が大勢であったが、ゼーレの内部資料よれば、フィールドを「突破」すると表現するのが妥当である様だ。詳しい原理は不明だが、槍が、A.T.フィールドの中和や浸食によらず突破したとすれば、極大の物理的衝撃力と云わねばなるまい。
A.T.フィールドによる〝中和・浸食〟や、アンチA.T.フィールドによる〝消滅〟でもなく〝突破〟であると記載されており、やはりアンチA.T.フィールドとの関連性は言及していません。
これらを踏まえ、ロンギヌスの槍は
A.T.フィールドを〝突破〟できる兵器
としか表現しようがないという結論に至ります。
②補完計画の祭器、その役割と性質
『新世紀エヴァンゲリオン劇場版
Air/まごころを、君に』より
まずは先程と同様、ゲーム『エヴァ2』の機密情報より。
一般情報
南極で、白い月からアダムとともに発見された。
ロンギヌスの槍は本来、生命の種とセットになった、保安装置である。
つまり、本編に登場するロンギヌスの槍はアダムと対になっているもので、本来であればリリスと対になっているロンギヌスの槍も存在するわけです。
これに関しては、
非公開情報
リリスと対になっているロンギヌスの槍は、恐らくファーストインパクトの時の衝撃で、リリスから抜けて離れ離れになったと思われる。この槍は今も見つかっていない。ひょっとすれば破壊されたのかもしれない。
と、記述されています。
また保安装置としての役割については、
非公開情報
ロンギヌスの槍は、神に近い=不死の力を持った生命の種(始源の存在)の動きを停止させる事が出来るアイテムで、生命の種(始源の存在)が神に及ばないその理由でもある。第一始祖民族は生命の種(始源の存在)が自分たちの目的に沿わないときの対策としてこれを用意していた。
と、記述され、具体的な本編中の使用例としては
最深度情報
碇ゲンドウやゼーレが、神への道を開くために、それまでやってきたリリスの増殖を、最終段階で一時的に止めるためネルフはアダムとセットになっていたロンギヌスの槍を輸送することになる。
と、記述されています。
また、『エヴァANIMA』の記述では
3巻86ページ
当時、碇ゲンドウはゼーレによって補完計画が主導されるのを避ける狙いもあって、手の届きにくい場所ーー結果的には月に槍を放置した
とされ、ゼーレの計画に必要な一方で、ゲンドウにとっては邪魔な存在であった事が再確認できます。
さらに、
1996年・1998年発売のレーザーディスク『新世紀エヴァンゲリオン』に掲載の解説文によると
人類補完計画及び使徒に関する内務省調査部の報告
(ロンギヌスの槍は、)「リリスによる補完」を実行する際に「依代」となる物体を「生命の樹」へと「還元」するーーとゼーレの文書に記されている。
『エヴァANIMA』にはこんな記述もあります。
3巻91ページ
何モノをも突き通す絶対の槍、人類補完計画開錠のマスターキー/ロンギヌス。
5巻257ページ
カトル「結局この槍って何なの?」
ゼーレ「槍形態のロンギヌスが出来ることは単純だ。因果を結ぶこと、そして断ち切ること。だが絶対だ、命を無分別に生み落とすリリスですら、これを打ち込まれれば停止する。」
カトル「因果?」
ゼーレ「原因から結果までの道、すべてのモノにそれがある。〜」
さらに、ロンギヌスの槍の出所に関しては…またも
1996年・1998年発売のレーザーディスク『新世紀エヴァンゲリオン』に掲載の解説文によると
人類補完計画及び使徒に関する内務省調査部の報告
ロンギヌスの槍は、アダム等と同様、人類の手に及ばない範囲の時間、空間で発生した物と考えられ、その発生要因、状況、形態は不明。
と、されています。
これらを踏まえ、ロンギヌスの槍の本質的な役割は
第一始祖民族(神)による枷=保安装置
であり、そして
ゼーレの計画=リリスによる補完を行うために必要な「祭器」
と考えるのが妥当かと思われます。
❸隠されたる力
『新世紀エヴァンゲリオン劇場版
Air/まごころを、君に』より
旧劇場版のラストシーンでは、エヴァ初号機の持つツインロンギヌス(仮称)が謎の光を放ち、量産型ロンギヌスの槍を破壊しました。あの力は一体何だったのでしょう?
『新世紀エヴァンゲリオン劇場版
Air/まごころを、君に』より
調べた所、それらしい記述を得ることができました。
まずはロンギヌスの槍の初期案から見ていきます。
エヴァ最重要資料の一つ「それをなすもの」に記述があることがわかりました。
コンセプトデザインワークス
『それをなすもの』より
あくまで企画段階の初期設定ですが、要約すると以下。
- 通常時はゴム紐の様なリング状。
- そのリングの中に空間を折り曲げる(折り畳む?)ように膨大なエネルギーを封じ込めてある。
- エヴァが近づくと斜めにちぎれて帯状の金属となり、ひねりが入ってバレル(細長い円筒形)を形成、上記画像のような外見となる。
- もともと対エヴァ用火器の砲身で、刺突時に最下部の輪の中に弾体が生まれ、発射される。銃槍に近い。
初期設定がどの程度生き残っているのかは不明ですが、初号機がロンギヌスの槍を広げるような描写は、封じ込まれていたエネルギーの解放を意識しているのかもしれません。
上記の設定は『エヴァANIMA』にも明記されており、
1巻178ページ
「ロンギヌスを〝膨大なエネルギーの糸が螺旋の向こうにたたまれた状態〟とする説はありましたが…コレが!」
ほどけた螺旋は一本の輝く直線に。
と、記述されています。
この後ロンギヌスの槍は理不尽な、そして強大な力で地球を覆います。(⇒ロンギヌス境界面)
いかがでしたでしょうか。今まで〝常識〟と考えていたロンギヌスの槍に関する知識がひっくり返ったような方もいらっしゃると思います。
これまでにも槍に関する投稿をしてきましたが、他にも考えている内容がありますので、今回はそれに向けての「知識のまとめ」として投稿しました。
皆様の考察等にも役立てていただければと思います。
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