『JUNE』(ジュネ)は、かつてマガジン・マガジンより出版されていた女性向け男性同性愛の専門誌です。
いわゆるBL系雑誌なのですが、これがエヴァファンとしても貴重な公式資料…以前ご紹介した『スキゾパラノ』にも並ぶ程の重要資料という側面があるため、今回は以下4点をご紹介します。
- 『小説JUNE』1996年8月号
- 『別冊JUNE』1996年9月号
- 『別冊JUNE』1996年11月号
- 『残酷な天使のように 新世紀エヴァンゲリオンJUNE読本』
『小説JUNE』1996年8月号 収録内容
庵野監督のインタビュー。
- 「渚カヲル」はもう一人のシンジであり、シンジが持つコンプレックスを全てクリアしている理想のシンジ
- TV版エヴァ第弐拾四話の初期プロットタイトルは「猫と転校生」
- 初期の段階ではカヲルは猫を連れた美少年で、猫が使徒本体でカヲルはその傀儡という案もあった
- 第弐拾四話の脚本を担当した薩川昭夫氏による準備稿について
- 「渚カヲル」という名前、及び「シ者」で「渚」という案は薩川氏によるもの
- TV版最終話で表現したかった事、方法論はともかくそこは決まっていた
- 画面に台本を映す(物語がTVに映る虚構というメッセージ)案は元から用意されていたもの
- 庵野監督ご自身が実写で登場する案は関係各所から反対された
- NERVの大浴場の動力源は? → 「やっぱり原子力でしょう(笑)」
- 主題歌「残酷な天使のテーゼ」の歌詞 "神話になれ" の部分は当初 "凶器になれ"
などなどなど。
『スキゾパラノ』がレイに焦点を当てた資料ならば、『JUNE』はカヲルに焦点を当てた資料と言えるのかもしれません。
『別冊JUNE』1996年9月号 収録内容
『小説JUNE』1996年8月号のインタビューにて、庵野監督が
- 川で二人で泳ぐという美しい絵があった
- さすがにこれは僕の許容範囲を越える
- 演出家も拒絶してしまって、「さすがにこれはできん」
とまで答えていた、BL要素が強すぎるという薩川氏による第弐拾四話の初稿と弐稿。
『別冊JUNE』1996年9月号より
川というのは正確には水没した街のことで、初稿の内容がこれに当たります。弐稿では大浴場のシーンがあり、こちらが採用されたようです。
全体的にこの脚本の雰囲気が実際の第弐拾四話に色濃く残っていて、セリフも全く同じものが多々採用されています。
また、「α-エヴァ」という特殊な機体が登場しますが、こちらについては後日別記事にてご紹介します。
ちなみに弐稿では、シンジが疎開で誰もいなくなった学校の体育館でピアノを演奏するカヲルに出会うというシーンがあるのですが、『小説JUNE』1996年8月号の内容も踏まえると、漫画版第9巻でシンジがカヲルに初めて会うシーンはここから着想を得ているのでは…という気もしてきます。
『新世紀エヴァンゲリオン』Volume9より
実はその後いろいろありましてシンジはカヲルと共に演奏をする約束を交わすのですが、使徒として覚醒したカヲルを自らの手で殲滅する事で、その約束は果たされないままになってしまいます。
しかしながらこの約束は、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』にてピアノの連弾という形で実現した、のかもしれませんね。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』より
『別冊JUNE』1996年11月号 収録内容
ゲストに野火ノビタ氏を迎えての庵野監督のインタビュー。
- 少女漫画と庵野監督の中学時代の友人「リツコさん」とのエピソード
- エヴァの行きつく先は『デビルマン』と『ナウシカ』7巻
- セルアニメの限界、エヴァで人間ドラマを描ききれていない
- 第12使徒レリエルが言葉を話す案があったが、鶴巻副監督から反対意見が出た
- エヴァ放映後、庵野監督は鬱で死を考えた事もあった
- A.T.フィールドをこじあけるイメージは強姦。服をひきちぎるイメージで実際、絹を裂く音を入れている
- 「A.T.」の和訳「絶対恐怖領域」は服を脱がされる怖さと、絶対に他人に侵入されたくない、つまり大事なものを守るもの、というイメージから
- 「心の壁みたいなもの」と、後からそこに行き着いた
などなど。まさにこれが「A.T.フィールドの意味」というやつですね。
『新世紀エヴァンゲリオン』第弐話より
上記はあくまで内容の一部で、他にも興味深い内容が載っています。
『残酷な天使のように 新世紀エヴァンゲリオンJUNE読本』収録内容
『小説JUNE』1996年8月号、及び『別冊JUNE』1996年11月号に掲載のインタビューの再掲。
後半は主にカヲシン関連の漫画や小説、著名人の対談、エヴァ辞典(エヴァ関連用語等の解説)などが収録されています。
個人的には「かおる×シンジ対談」というコーナーで和田慎二氏が「ゲンドウを13号機に乗せたい」と発言している所に少し「おっ」と思ってしまいました笑
和田 やっぱりゲンドウを乗せてみたいね。黒のプラグスーツかなんかでね。拾参号機かなんかで、ドワーッと。
(原文ママ)
ちなみにアスカの名前が和田氏の『超少女明日香シリーズ』の明日香が由来となっている事もここに明記されています。
『スキゾパラノ』のような注釈も多く、また入手難易度的な観点からも、もし手に取って読むのであればこちらをお勧めします。
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